「近時、従軍慰安婦、強制連行犠牲者など、日本の戦後補償からとりのこされてきた第二次大戦の戦争被害者から、日本の戦争責任を追及し戦後補償を求める声が高まり、日本政府や日本企業に対する直接交渉や訴訟の提起を行う動きが急速に広がっています。また日本による最大の戦争被害を受けた中国の被害者からもかつて日中外交上の戦争賠償請求権が放棄されたという枠を越えて、民間補償請求の声が公然と上がってきています。こうした声はアジア各国からに止まらず、旧連合国の戦争捕虜からも、日本の戦後補償が余りに不十分であると追及の動きが活発化しています。
 これらの動向は、国連人権小委員会など国連においてもすでに取り上げられ、かつての戦争犠牲者に対する人道上の救済に止まらず、現在及び将来の国際的な人権擁護において無視できない問題として急速に展開しつつあります。
 すでに多くの日本人民間グループや弁護士が、個別に様々の方面で国際的に連絡協力し、被害者の声に耳を傾け事実の調査に協力し、また補償を求める直接交渉や訴訟の提起に取り組んでいます。
 この戦後補償問題には、国内法における損害賠償請求権の時効の問題や、条約による戦争賠償請求権の放棄との関連など国際法上の難しい問題を含む、重要な法律的な争点が存在しており、その解決には、国連レベルを含む広い国際的視野が必要です。
 我々は、この戦後補償問題は、とくに被害者の高齢化等の条件からみて焦眉の問題であり、日本の歴史的な課題として克服しなければならない戦争責任の問題であると考えます。さらに、長い歴史的視野からみて、戦争による被害者に対する国際的な司法救済という、より公平で普遍的な国際的人権擁護への方向をも示唆するべきものと考えます。

 ここに我々は、次の活動をとくに必要と考え、広く戦後補償問題を考える弁護士連絡協議会の結成を呼びかけます。
1 戦後補償問題をどうとらえるべきか。
2 同問題に関する国際人権法等法律問題の検討・研究及び提言。
3 同問題をめぐる国連人権小委員会等、国連レベルの動向の把握・情報の交換及び国際NGO等との交信・協力。
4 2、3を通じた内外におけるすでに活動を開始している戦後補償を求める個別弁護団並びに将来活動を開始する個別弁護団に対する支援協力。並びにこれら弁護団相互の連絡協力関係の促進。

 先生方におかれましてもぜひ右趣旨にご賛同いただき、連絡協議会にご参加くださるようお願いします。


平成4年12月

(呼びかけ人)
弁護士 堂野達也 弁護士 辻 誠 弁護士 藤井英男 弁護士 北山六郎
弁護士 菅沼隆志 弁護士 中坊公平 弁護士 山田伸男 弁護士 杉野修平
弁護士 永野貫太郎 弁護士 中根洋一 弁護士 鈴木一郎 弁護士 谷川浩也
弁護士 藍谷邦雄 弁護士 尾崎純理 弁護士 高木健一 弁護士 下河辺和彦
弁護士 新美 隆 弁護士 五百蔵洋一 弁護士 内田雅敏 弁護士 笠井 治
弁護士 鈴木五十三 弁護士 早川忠孝 弁護士 藤森勝年 弁護士 村越 進
弁護士 清井礼司 弁護士 金 敬得 弁護士 竹之内明 弁護士 柳川昭二
弁護士 海渡雄一 弁護士 高木喜孝 弁護士 飯田正剛 弁護士 稲垣隆一
弁護士 山田正記 弁護士 江口公一  
愛知県立大学教授 田中 宏 アジア人権基金事務局長 有光 健
※ 事務局
東京赤坂総合法律事務所  
東京都千代田区麹町4-5-10麹町アネックス2階